恋萌え~クールな彼に愛されて~
「ちょうど俺の卒業と同じ頃だった。一緒にいた間に増えたものは全部置いて
やっぱりリュック一つでふらっと出て行ったな。
彼女の荷物といっても俺から見ればガラクタにしか見えない物ばかりだったんだが……
欠けたガラス瓶とか、動かなくなったブリキの玩具とか
千切れたネックレスとか、貝殻や石もあったな。
でも捨てていいものかどうか解らなくて結局今まで保管してあったんだ」


さっき茶々が預かっておいて、と言ったのはその荷物の事だったのかと
梨花は合点がいった。


「去年のクリスマスカードに東京へ戻ることになったと書いたら
ちょうど良いから荷物を返してくれと年賀状で返事がきた」


捨てないで正解だったな、と塚本は微笑んだ。


「連絡はずっと取り合っていたの?」
「いや、クリスマスカードだけだ」
「メールとか電話とかは?」
「しない。別に用もなかったしな。仕事上の関係もないし必要がない」


用が無いから連絡はとらない。そんな男同士の付き合いのような
サバサバした関係にほっとした反面、どこか妬ましいような思いがすることに
自分の塚本への思いの深さを改めて知った梨花は小さくため息をついた。



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