君を待っている【TABOO】
「へぇー、彼氏連れてくるなんて卑怯だなぁ……」
背後で囁かれる低い声に、血流が一気に増えたように体が熱くなる。
「もう……あんな電話かけてこないで……」
今日は、この男にそれを伝えに来ただけだ。
彼を連れて、この男が待つ図書館へ、私は決別するために足を運んだ。
「この本……」
私の背後から腕を伸ばして、綺麗な長い指で一冊の本をくっと引き抜く。
背中にあたる彼の胸……紙の匂いの中にわずかに混じる彼の香り、息使い、温もり。
もう忘れたはずなのに、無意識に感じとってしまう。