秘密
遅い時間だった。陽が暮れるのが早い、寒い冬でのひとり仕事。
冷えた図書館の奥は薄暗かった。

私はなにげなく古書を見ながら棚を通りすぎる。
すると。本と本の間に、ほんの一冊分の隙間を見つけた。

ここには何が入っていたっけ?
思い返しながら覗きこむと、目が見えた。
人間の、左右ふたつの目。

ここにいるのは自分ひとりのはずなのに。
私と同じ年くらいの青年の目。

「ごめんね、驚かせて」

謝ったのは、透けるような身体を持つ幽霊だった。
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