『無明の果て』
園がもう一度歌う事を夢み、一行が仕事を見つめ考え、私も一から一行と生きて行くんだという事を、この身体に突き付けられたと云うことを。



信じて来た事を、ちゃんとやったのか、やれなかったのか、それとも、やらなかったのか。



涼が目指している厳しい世界は、正にそれが全て、自分との戦いの真っ只中に、西山涼という青年は今いるのだ。



自分自身と向き合う、簡単そうで、本当はとてつもなく困難な挑戦を、涼は先頭をきって進もうとしているのだ。


こんなにも苦しい試練が、通り抜けた先の穏やかな未来に必ず繋がっていると確信しているのだ。



私はここに残り正幸さんにメールを送った。



「ご迷惑をおかけしました。

私の至らなさが、みんなを傷つけました。


いつか、私らしく仕事で恩返しが出来たらと、良い報告が出来たらと思っています。


正幸さんの奥様になられる方に、宜しくお伝えください。

また会える日を楽しみにしております。
どうぞお幸せに。


麗子」



少しして 返事が来た。



「僕は親の仕事の後を継ぐ事を誇りに思っています。

お見合いをして、そんな話を熱心に聞いてくれた彼女と一緒に頑張って行こうと思っています。

麗子さん、一行を頼みます。」




地に足をしっかりつけて、私は一行を守って行こう。



また メールが入った。



「涼から連絡があったので、夜会って来ます。
心配しなくて大丈夫です。

一行」




心配なんか もうしない。


きっと また いつかみたいに、



「しばらく」


なんて言いながら、肩を並べてる二人が、私には見えるから。
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