『無明の果て』
テーブルには、
“おめでとう”

と書かれたケーキに、大きいローソクが三本と、その回りに九本の小さなローソクがともされていた。


「一行、ありがと。
その太い三本は今年でおしまいね。

だけど私の生きてきたキャリアみたいだね。
うれしい。
泣きそう。」


こんな風に、私のために、私のわがままな時間まで一緒に包み込んでくれる一行に、全てを話す時が来た。



「麗ちゃん、さっきまで涼と電話で話してたんだよ。
みんな聞いた。

麗ちゃんモテモテで、彼氏としては、鼻高々であります。」


一行はおどけて、笑っていたけど


「初めから、そうだって言ったでしょ。

涼と俺は似てるんだから。」


「涼くんにプレゼントもらっちゃった。

ほら、この時計」


「よかったね」


“よかったね”


やっぱり一行はそう言った。


「俺も麗ちゃんに話さなきゃいけない事があるんだ。」


きた。


だけど、怖くはない。

ドキドキしているだけだ。


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