Black Beast.



「 あー・・・暑ぃ 」


「 玲央!投げて! 」


「 うぜぇ 」



前髪をかき上げ、不機嫌そうに
眉を寄せた玲央くんは
走り寄って来たすずくんを
容赦なく海に向かって蹴り飛ばした。



「 ・・・容赦ねーなぁ 」



吹っ飛ばされたすずくんを見て
苦笑する希くんは”なぁ”と
隣でダルそうに寝転んでいた
璃玖くんの頭を小突いた。



「 投げてって言ってたのに~ 」


「 別に変わんねぇだろ 」



暑いと何度も言いながら
さっき買ったばかりの水を飲み干し、
玲央くんはダルそうに立ち上がると
私の方へゆっくり近づいてきた。



可愛い女の子たちが怯えているのは
きっとこの人のせいなんだろうなと思う。



暑いし蝉はうるさいし、海で遊んでいる
子どもの声もうるさくてイライラしてる
玲央くんの表情からは不機嫌以外
何も読み取れない。



「 ・・・ど、どうしたの? 」



ほどよく筋肉のついた細い体に
釘付けになってしまいそうで
目を逸らしながら声をかけた。



< 236 / 336 >

この作品をシェア

pagetop