オレ様専務を24時間 護衛する


会議を終えた俺は松波を連れ、

行きつけの蕎麦懐石・元禄庵で昼食を済ませた。


正直、好物の蕎麦懐石だが味を覚えていない。

それくらい気持ちが浮ついていた。


別に今生の別れな訳でもないし、

喧嘩別れした訳でもない。


だが、何故か、胸騒ぎがするんだ。

今往かずして何時往くのかと。




松波の運転で空港へ向かう車内。

俺は青く澄んだ空を見上げていた。


あの空の向こうに行ってしまうのか。

柄にもなく、センチな気分になっていた。


空港に到着すると、一目散にエントランスプラザへ向かった。


時間はまだある。


平常心を装って、行き交う人々を見回していた。

隈なく探してみるが、どこにも居ない。


もしかして、………もう……。


諦めかけたその時、喫煙室の入口で電話をしている彼女を発見した。

俺はすぐさま彼女のもとへ駆け寄った。



彼女は俺に全く気付く事なく、通話中。

そんな彼女を驚かせようと気付かれぬように背後に立つと。


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