オレ様専務を24時間 護衛する


「これからは、俺にそんな風に頭を下げるな」

「へ?」



俺は指先を揃えて会釈する松波の手をそっと掴んだ。


もう、俺に頭を下げる必要はない。

――――そう、伝えたくて。


なのに………。


「ですが、これは仕事ですので……そういう訳には……」

「ッ!!…………はぁ………」



まさか、こんな展開になるとは思ってもみなかったから

今までのコイツ………いや、この子に対しての態度を

白紙に戻したくても……今となってはどうにも出来ない。


この子にとって、こうして今いる時間も仕事の一部で

俺という存在は『護衛対象者』でしかないのだろう。



あんなにも逢いたかったあの子がこの子だと解り、

俺はこんなにも動揺しているというのに、

この子の記憶の片隅にいる幼かった俺は、

きっとさして逢いたいと思うような相手でもなかったのだろう。



はあぁぁぁ………。

何だか、2度フラれた気分だ。


俺は動揺を隠し、出来るだけ優しい表情を作りながら。



「もう遅いから休んで………おやすみ」

「はい。………おやすみなさい」


俺の言葉なんて届いてない。

松波は再び会釈した。


< 517 / 673 >

この作品をシェア

pagetop