オレ様専務を24時間 護衛する


刻一刻と消えてゆく時間。


俺が俺でいられる時間は

残り24時間を切ってしまった。


だからといって、どうこうしよう等と考えてもいないが。


心の奥のパンドラの箱がギシギシと軋む音を立てている。

まるで、再び開けて貰いたいかのように。






1日の仕事を終え、

帰り支度をしながらふと思い出す出来事。


取引先との通話中に

彼女にネクタイを結ばせたっけ。


ぎこちない手つきで俺の顔色を窺いながら。

あんな風に無理やりさせた事でも

結構いい想い出になるもんなんだな。



今にもドアを開けて、

『お車の準備が整いました』とか言って現れそうな気がする。


丁寧に珈琲をデスクに置く仕草。


スッとジャケット羽織らせてくれる仕草。


エレベーター待ちの間にフロア表示を見上げる仕草。



自宅じゃない場所なのに、彼女の姿が浮かんでくる。




フッ、俺の脳は相当イカれて来たらしい。


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