オレ様専務を24時間 護衛する


何て声を掛けようか、あれ程考えて練習したのに

いざ、本人を目の前にすると涙ばかりが溢れ出して

とても言葉に出来る状態ではなかった。


しかも、足が言う事を聞いてくれない。

立ち上がりたいのに力が全く入らない。


どうして、こうもタイミングが悪いの?

悔しさも相まって涙は止まりそうにない。



すると、


「寒くないか?」

「ふぇ?」


1番最初に彼が発した言葉が『寒くないか?』


『何故、来たんだ?』でもなく

『どうして、ここにいるんだ?』でもない。


私の事を気遣って言ってくれた言葉。


もう二度と優しい言葉はかけて貰えないかもと思っていただけに

嬉しくて嬉しくて、凄く嬉し過ぎて

本当は物凄く寒くて死にそうなのに

何度も何度も頷いて見せる。

………寒くは無いと、貴方に伝えたくて。



依然、立ち上がろうとしない私の前に

彼はゆっくりとしゃがみ込んで視線を合わせるようにした。


そして、


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