HELLO,goodbye.


3歩ほど足を進めれば看護師の目の前。


私が楓の携帯を差し出すと、看護師はひどく戸惑ったようにそれを受け取った。






「…どうして、

泣いてらっしゃるんですか?」



看護師の言葉に、少しだけ私は目を見開いた。


頬に触れれば、自分でも気付かないくらい無意識に流れていた涙。

それが看護師の表情の理由だった。


(……私は馬鹿か)

一瞬自嘲に笑ってから、おそらく出会ってから初めて 私は看護師に微笑んでみせた。


「お願いします。きっとみんな、心配してると思うから」

"実際、楓の携帯には何件も連絡がきていたんです"


質問には答えずただ笑みを向けた。



(きっと

この涙に意味を与えてはいけない。)


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