ピエロ-私と中年男の記録-
あの日・後
帰り道、車の中。

母は普通にしていたつもりなんだろうが、何か違っていた。

あの、コワイ、良いニオイの人のせいかなぁ…

「母さん、どしたん??」

妹が聞いた。

「どしたんて、何??」」

母は驚いている。

「ほなって、元気ないもん。」

妹が怒ったように言った。
私はその後すぐに

「喧嘩したん??」

と聞いた。

母は黙っている。

妹は

「わかった。小指のおっちゃんと、喧嘩したん??」

と悲しそうに言った。

「違うよ。母さん以外の人なんよ。喧嘩したわけでもないんよ。」

寂しそうな横顔。

「あの人、後から来た人と、小指のおっちゃん??」

私が聞くと、母は少しだけ笑った。


「喧嘩して、どっちかが悪いとかでないんよ。あんたら二人も、好きな人おったら、苦手な人もおるだろう??そういうことなんよ。仕方ないことなんよ。」


「仲良ーしたら良いのになぁ。」

妹が頬を膨らませた。


大人って、喋らず喧嘩できるんやなぁ。
言いたいこと、言わんのやなぁ。


静かな車内。


「大人ってめんどいなぁ。」


私は呟いた。


母は聞こえていないのか、黙っている。


ピエロの、大人の、イメージが少し変わった一日だった。
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