ピエロ-私と中年男の記録-
一人だけ
あれから何週間。


私はピエロに行っていない。


母はまだ行っているようだった。



「久々に、姉ちゃん、行かんで。父さんも今夜は飲みに行くし。」

母に誘われた。

「姉ちゃん行こうー。」

妹は嬉しそうだ。

「何か、嫌なんよ。」

私は言った。

母は驚いていない。

妹は

「えー、何でー??」

と騒いでいる。

「姉ちゃん、分かるけど、ママが会いたがってたよ。…あと、小指のおっちゃんは来よらんよ。」

私は黙って母を見た。

母も私をじっと見ている。



何、その言い方。
そうやけど、そうじゃない。
私、ごっつ、悪者でぇ。



妹は騒いでいる。小指のおっちゃんが好きだから。



「…ほな、行くわ。」



母と妹は、笑った。
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