誘惑図書館
空いた窓から微かに聞こえる歓声。
近くにある大学のグラウンドでは、サッカーの練習試合が行われていた。
私の年下の恋人も、今頃そこで仔犬のように走り回っていることだろう。

カウンターにさっと影が落ちる。
「いいの? 応援に行かなくて」
近くで聞こえる低い声。
カウンターに置かれた彼の手の長い指。
真っ直ぐに伸びたそれは、ごつごつとした恋人の指とは全然違っている。
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