秘密の恋
街外れの図書館は個人の所有で、大型書店では手に入らない地方作家の本や
郷土資料が充実している。
公立の図書館に行かずここへくるのは、ひとりで過ごすため。
館内はゆったりと広く、静かな空間が心地良い。
彼がカウンターにいる日は緊張する。
熱を含んだ視線が私を見ているようで、その目から逃れるために
うつむきながら本を渡してきた。
司書にしては無愛想で、他の職員が彼に敬語を使っているから、
ただの職員ではなさそうだ。
では、図書館の経営者の身内だろうか。
そんなことを考えながら、『風と共に去りぬ』 を読み始めた。
スカーレット・オハラは、喪服を着て舞踏会に出る奔放な未亡人だと知った。