秘密の恋


街外れの図書館は個人の所有で、大型書店では手に入らない地方作家の本や

郷土資料が充実している。

公立の図書館に行かずここへくるのは、ひとりで過ごすため。

館内はゆったりと広く、静かな空間が心地良い。


彼がカウンターにいる日は緊張する。

熱を含んだ視線が私を見ているようで、その目から逃れるために

うつむきながら本を渡してきた。

司書にしては無愛想で、他の職員が彼に敬語を使っているから、

ただの職員ではなさそうだ。

では、図書館の経営者の身内だろうか。


そんなことを考えながら、『風と共に去りぬ』 を読み始めた。

スカーレット・オハラは、喪服を着て舞踏会に出る奔放な未亡人だと知った。




< 2 / 9 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop