はんぶんこ
序曲

両親のリサイタルが終わった。いつ聴いても綺麗な音色、奏でているのが身内などと信じられない程作り上げられた音だった
母はピアニスト、父はチェロリストだ プロの世界でも少しは名の知れた夫婦だった


私は控え室へと向かった、その途中ですれ違うのはどの方々も音楽界の重鎮って感じの人々で…改めて両親の偉大さを思い知った
控え室には何人か花束を持った人がいて その中心にいたのが両親だった
私の憧れであり また私の壁でもある…
「まあ、来てくれたの?」
お母さんが私に気づいて声をかけてくれた
「うん、すごい花束だね!」
お母さんは微笑むとこっちに来て私の肩を抱き
「この子も私たちと同じ音楽の道を目指してますの」
と一言
すると周りの人達の注目は一気に私へと向かった
“まあ、将来有望ですわ”
“ご両親と協奏されるのもそれほど遠くではないですな”
“楽器は何を弾かれるのですか?”

私はあまりの雰囲気に黙り込んでしまった
「まあ、昭ったら…ごめんなさい 昭はまだこういうのに慣れていなくて…昭はヴァイオリニストを目指しておりますの。」
周りから歓声が上がる
私は正直ギターの方がいいんだけどな~
周りの人達はしばらくして帰っていった



この時私はまだ知らなかった、両親がなぜこんなに有名であるか
そして両親がどんな手段を使ってでも音楽を続けていたなど…
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