一度きりでいいから…。
「あっ、うん。その…」


どうしよう。緊張して上手く話せない。

戸惑いキョロキョロと視線を泳がせる私の耳元に、立川くんの吐息がかかる。


「ねぇ、ちょっと2人で姿消さない?実は俺、宮沢さんに言いたかったことがあったんだ」



半ば強引に腕を引かれて皆に気づかれないまま外に飛び出し、通りかかったタクシーに乗せられた。



「あの、どこに行くの?」


「うん?2人きりになれる場所」


「えっ?」


「宮沢さん、結婚するんだって?」


聞かれて心臓が跳ね上がる。俯きながら頷く私の肩を抱き寄せると彼が耳元で囁いた。


「俺、ずっと好きだったんだよね。だから、抱かせてよ…一度きりでいいから。俺のものになって」


一度きり…。


それでもいい。


私も…彼に抱かれたい…。




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