みじかいおはなし


じっと座っていることにも飽きた私は、玄関のドアを開けて外を見る。

目線の先は、いつも彼が車を停めるアパートの脇。
彼からの連絡がないということは、そこに車が停まっているわけがないのだけれど。
行動も気持ちも落ち着かない私は、車が停まっていないのを見て、少しだけ落ち込んだ。


たかが一週間会っていないだけ。
それだけなのに、その一週間はとても長くて、早く今日が来ればいいのに、と何度思っただろう。
 

「まだかな…」

私は部屋の中に引っ込んで、一人呟く。

事務職の私と営業職の彼は、仕事の休みが殆ど合わなかった。
初めの頃は月に一度どこかに出掛けられていたけど、今は長期休みに出掛けるくらいだった。

だから週に一度、ほんの数時間でも会って言葉を交わせる時間は、私にとってとても大切なものだった。
彼にとっても、同じであって欲しいと思った。


今日はなにを話そうか。

そう考えていると、私の携帯が震えた。
画面に表示されるのは、もちろん彼の名前だった。


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