十八番-トバチ-
声のする方を振り返ると、
そこには門番らしき人間がいた。


門番と言っても、単に町と町の境目に形だけ
作られた見張りのようなものなので、
実質的にはほぼお飾りである。


現にこうして今和真の向かい側に立つ男は
たいそう暇そうに、こちらに向かって話しかけてきていた。


手に持った槍の持ち手を擦りながら
男は楽しそうに笑っている。



「迷子にでもなったのか」


「・・はい。
友達と見に来ていたんですけど、
人混みの多さにはぐれてしまって」


「まぁあの人数じゃ仕方ねぇわな。
あと1時間くらいすりゃ多少は掃ける。
下手に動いてもなんだし、ここで待ってりゃどうだ」


「え、でも」


「電話もあるぜ。好きに使え」





その後。
電話を借りハナビの家に連絡を入れた。
両親に聞いたところ、まだハナビは帰ってきていないそうで
おそらく自分を探してくれているのだろうけど、
もし帰ってきたら自分は大丈夫だという旨を伝えてくれと
言伝た。





「ありがとうございました」


頭を下げてお礼を言えば、いいってことよ、と彼は笑った。



まだなんとなく家に帰るには早い時間な気もして、
自分もその隣に座り込んだ。



夜は星が綺麗だ。
雲一つない闇色の空。


祭りの終わりまでこれが続けば、
きっと最終日に行われる花火大会も綺麗だろう。


それを想像して微笑んでいたら、隣から声が聞こえた。



「・・しかし珍しいな」


「はは・・。よくあるんです、昔から。
だから迷子自体は慣れっこなんですけど。
友達を心配させるのは、申し訳なくて」


「・・あぁ、そっちじゃなくてな」


「?」


「おまえも知ってんだろ、あの人籠のこと」







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