わらって、すきっていって。

本城の言った『いろいろ』には、たぶん、オレの想像を絶する『いろいろ』が含まれているんだろうと思う。

まず、ミヨとかいう女、あれは一筋縄ではいかなさそうなやつだった。ぶっちゃけオレはあんまり好きじゃないタイプだ。いやまあ、よく知らねーんだけど。


でもとりあえず、オレにできるのって、ここまでかなって。


「オレが言うのもアレだけどさ、あんこのこと、マジで頼むよ」

「はい。がんばります」

「まあ、おまえが告ったところで今度は逆に振られるかもしんねえけどな」

「……いや、うん。そうだよな、マジで」


バカ、冗談だっての。いちいち本気にしてんじゃねーよ。

言っとくけど、あんこの本城への気持ちは、そんな簡単に消えるほど軽いもんじゃねんだよ。オレには分かる。

でも腹が立つからなにも言わないでやった。ていうかむしろ、振られたらいいんだよ、本城も。振られろ。


「霧島。あのさ、ホント、ありがとな。目が覚めた。このままだと俺、安西さんのことも、美夜のことも、傷つけるとこだった。自分のことしか考えてなかった」

「……あー。おまえはちょっと、優しすぎなんじゃねえの」


それはたぶん、本城の圧倒的な長所で、決定的な短所だ。

そして、あんこが本城に惹かれたひとつの要因でもあるんだろう。


「みんなに同じだけ優しくしてたらさ、それはもう、優しさじゃねーよ」

「……はい。肝に銘じます」


なんだよ、素直かよ。思わず笑うと、本城もつられて笑って、お互いに「なんだよ」って言いあった。

それにしてもゲームが本当に捗らない。2Pに切り替えても、本城は案の定ヘタクソだし、進まねえのなんのって。だからスマブラをすることにした。


でもやっぱり、本城はかっけーなって思うよ。たぶんオレは一生、すべてにおいてこいつに敵わないんだろうと思う。

でも、オレが身を引く理由はべつにそこにあるわけじゃないんだ。

本城なら、ちゃんと一途にあんこを守ってくれるんじゃないかって。優しく守ってくれるんじゃないかって。

なんとなくそれは確信しているから、しょうがねーし応援してやろうかなって、画面上でボコボコにしながら、そう思った。

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