わらって、すきっていって。
新京極は人でごった返していて、こんななか本城くんたちを見つけるのは難しいんじゃないかと思ったけれど、えっちゃんの視力はわたしの想像を遥かに超えていた。
「――あ、野間じゃーんっ!」
突然、えっちゃんのよく通る声が響きわたった。
そこにいるひとがいっせいに振り向く。でもそんなのお構いなしに人混みをかき分けて進むのだから、彼女は大物だと思う。わたしも置いていかれないように必死でついて行った。
すると、気が付けば、目の前に本城くんがいた。
「ほっ……んじょう、くん!」
「わ、安西さんだ」
おかしいな。さっきまでわたしの目の前にはえっちゃんが歩いていたはずなのに、いつの間に本城くんにすり替わったんだろう。
それにしても、本城くんはきょうもとっても素敵だ。彼は、毎日例外なくとっても素敵で、困る。
「安西さん、お土産買った?」
「か、買ってない! いまから買おうと思いまして!」
「でた、安西さんの敬語」
「つい、癖で……」
うそ。敬語の癖なんか微塵もないし、むしろ敬語は苦手なくせに。
「俺らもいまからお土産買おうと思って。でも、人多すぎてなにがなんやらだよな」
新京極は、観光客や地元のひとであふれかえっていて、うちの制服を着た高校生もたくさんいる。
そんななかでわざわざ野間くんに声をかけたえっちゃん。変に思われてはいないだろうか。
「安西さんはなに買うの?」
「えと……八つ橋と、あとはなんにも考えてないや」
「あはは、でもやっぱそれは外せねーよな」
笑ってくれる。なにを言っても、本城くんは少し首をかしげながら、笑顔で聞いてくれる。答えてくれる。
それは決してわたしに対してだけじゃないんだろうけれど、どうしようもなくうれしいのも、本当だ。