わらって、すきっていって。

「ごめん、わたしの言葉が足りなかった。……きょうね、本城くん、帰りにうちまで送ってくれたんだけど、そのときに恋の話になってね。……好きなひとがいるって、言われた」

「はあ? 誰が好きなわけ?」

「それは分かんない。……こわくて訊けないよ、そんなの」


自分から失恋するなんて絶対にしたくない。そんなことできない。

すると、受話器の向こうから大きなため息が聞こえた。そのあとで「バカだなあ」と言われた。呆れたような声だった。


「もしかしたらその相手ってのがあんこの可能性も、なきにしもあらずじゃん?」

「ええ!? そんなわけない、それは絶対にない!」

「なんで?」


なんでって言われても。そうとしか思えないよ。だってわたし、本城くんに好きになってもらえるような要素、ひとつもないし。

本城くんはもっとかわいくて優しい子を好きになるに違いない。だって彼があんなに素敵なひとなんだ。素敵な女の子じゃないと好きにならない。そうに決まっている。


「ライブに誘ったり、家まで送ったりさあ。普通、なんとも思ってないような子にそんなことしないと思うけど、あたしは」

「違うよ、本城くんは優しいからそうしてくれてるだけで」

「なんでそう、マイナスの方向に考えちゃうかなー。ライブに誘ってもらえた、家まで送ってくれた、これってもしかしてワタシのこと好きなんじゃないの、とか思ってたほうが楽しいじゃん?」

「そうできるものならわたしもそうしたいよ……」


でも、こわいんだよ。そんな図々しいことを思っていて、いつか振れらたとき、きっとわたしは立ち直れない。
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