唯一無二のひと


結婚して8年。



秋菜は同い年の篠原豪太と二十歳(ハタチ)の時に結婚した。


早婚なのは、育った環境のせいだ。

二人とも早く暖かい家庭が欲しかった。
豪太との結婚は、秋菜にとってごく自然で当たり前のことだった。



大人になってから知った事実その①

中学の同級生と結婚したというと結構、人から驚かれること。

前のパート先の店長には、
「他にいい人、いなかったの?」
と言われた。

(それがどういう意味なのか、秋菜にはいまだに分からないけれど)


大人になってから知った事実その②


子育ては戦いだということ。
柊が生まれてから、秋菜の生活は一変した。


10時間にも及ぶとてつもない出産の痛みに耐え、やっと逢えた小さな命。

そして、人生最大の試練ともいえる育児が始まった。



結婚してからずっと夫婦二人、好きにやってきたのに、今は、家事と育児に追われる毎日。



柊は可愛い。

秋菜の生き甲斐だ。
生きる灯火となってくれた。


育児は昼も夜もなく、秋菜の想像よりも何倍も過酷だったけれど、秋菜自身が望んだことだ。





「……はあ、
やっぱ、いい仕事ないな〜どれもこれも…」


スマホのホームボタンを押した。


テーブルに頬杖をつきながら秋菜は思う。



(…なんか、違うんだよな……)




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