唯一無二のひと



【母親失格】


その言葉は秋菜の胸に、深く突き刺さった。


そんなことがあるわけがない。


どんな時も母・由紀恵は、娘の秋菜に無償の愛を捧げ、守ってきてくれた。

秋菜がこの世でたった一人の大事な存在であると、ことあるごとに感じさせてくれた。


秋菜は、真っ直ぐに由紀恵の瞳を見た。


「ママは母親失格なんかじゃないよ。
私、ママと二人暮らしで心から良かったって思ってる。

これからはママの幸せを一番に考えてね」






秋菜は由紀恵を解放したーーー



自分は決して不幸な子供ではなかったと伝えることで。


大人も子供の都合に付き合い、苦しい事、我慢する事を重ねなければならないのだと、今、気が付いた。


過去にどんなことがあったとしても、由紀恵は秋菜の唯一無二の人。


ーーー豪太とは違う意味で。

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