唯一無二のひと



ライトの明かりで陰影のついた一糸纏わぬ豪太の裸身は、見知らぬ誰かのように見え、秋菜は急に恥ずかしくなって、
慌てて目を伏せた。


15歳の時から何度も何度も、きっと
千回以上、その身体に抱かれているのに。





ときおり吹く風は涼しく、開放感が
あった。


「気持ちいいね」

秋菜が湯を自分に肩に掛けながら
いうと、豪太は、

「すっげえ、気持ちいい!」
と叫ぶように言った。


そして、おもむろに秋菜の背後から両腕を回し、マッサージとは違う動きをする。


豪太の指は、茶色い湯よりも更に優しく秋菜の身体にまとわり付く。


「貸切風呂の制限時間、30分しかないから前菜だけね」


やけに豪太は真面目な口調で言った。


「…うん」




されるがままになりながら、自分の身体が変わったことを秋菜は実感する。


火がつき、燃え上がり、深みへと溺れて行く感覚。


それは少し怖い気もした。


まだ早いが、豪太の膝に向かい合うようして跨り、温かい湯の中で身体を重ねた。


秋菜自身の意思で。


「……メインディッシュ、
待ちきれないの?」


秋菜の背中に腕を廻し、豪太は口元に
笑みを含んで訊く。


「…ちょっとだけつまみ食い」


豪太の肩にちょこんとおでこを付け、
秋菜は答えた。



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