お嬢様になりました。
重忠さんは涙を拭うと「すまない」と言って笑みを零した。


私は首を横に振った。


お母さんは重忠さんの事を憎んでたけど、お婆ちゃんが話してくれてた通り素敵な人だと思った。



「本当は里美たちが死んで、直ぐにでもお前さんのところを訪ねたかった。 だが、それが出来なかった」

「どうして、ですか?」

「お前さんに拒絶されるのが怖くて堪らんかったんじゃよ……」

「私が?」



どうしてそんな事を思ったんだろう?



「ワシは菊代に酷い事をしてしまった。 そして、そのせいで里美には随分苦労をかけてしまった。 里美に拒絶された様にお前さんにも拒絶されたらと思うと、情けない事に見守る事しか出来なかったんじゃよ」

「私は、母とは違います。 母の気持ちも分からなくはないです。 でも、私はいつもお婆ちゃんから重忠さんの話を聞いていたので、実を言うと、少しお会いしたいと思ってました」



この気持ちに嘘はなかった。


大好きなお婆ちゃんが大好きになった人に純粋に興味があった。



「好きだから傍にいられなかったってお婆ちゃんが言ってました。 好きな気持ちが会えない辛さで汚れていくのが嫌だったって……言ってたんです」



それ以上離れた理由を語らなかったお婆ちゃん。





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