お嬢様になりました。
玲は華の説明を聞きながら携帯を受け取ると、マジマジと見始めた。


そして携帯の画面と私の顔を交互に見て、私の髪の毛に触れた。


な、何!?



「髪、伸びたんだ」

「髪?」



玲の持っている携帯の画面を覗くと、高校一年生の時に華と撮ったプリクラが映っていた。


懐かしい。



「これ入学して直ぐ撮った奴じゃん」

「仲良くなって初めて撮ったんだよね」

「そうそうっ。 本当、懐かしいな……」



このプリクラ撮って直ぐくらいだったかな……お父さんとお母さんが事故に遭ったのって……。


今日はダメだな。


一々感傷に浸ってる。


突然手に温もりを感じ、指が絡められた。



「玲……」

「早く行こう」

「そうだね」



電車で移動したかったけど、それは絶対に嫌だと橘さんに言われ、私たちはタクシーで移動する事になった。


橘さんはタクシーでさえ渋っていた。


どんだけお嬢様なのよ。



「どうかした?」

「え? どうもしないよ?」

「ならいいんだ。 黙ってずっと外見てるから、具合でも悪いのかと思った」



私は何も言わず玲に微笑んだ。


隆輝はもう一台のタクシーに乗っている。


橘さんと一緒は嫌だとかなんとか我儘を言うかと思っていたら、隆輝は無言のまま橘さんと同じタクシーに乗ってしまった。


橘さんの事を知っていくうちに、考えが変わってきたのかもしれない。


それならそうと言ってくれればいいのに……。





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