お嬢様になりました。
深々と頭を下げられ、慌ててしまった。


撮影中とはいえ、周りの人たちは物珍しそうに私たちの事を見ている。



「あ、あのっ、頭を上げて下さいっ!! 私の方こそご挨拶が遅くなってしまって、すみませんでしたッッ」



やっと頭を上げてくれた松本さんを見て、ホッとした。


こういうの慣れないんだよね。


心臓に悪い。



「実はレイが撮影現場に誰かを連れて来るなんて、初めての事で驚いています。 詮索する様で申し訳ないのですが、レイとはただのクラスメイトですか?」

「はい。 レイとはクラスメイトで仲良くさせて頂いてます」

「そうですか。 でもレイはきっと違うんでしょうね」

「え?」



松本さんは玲の姿を見つめたまま、口を開いた。



「最近のレイは昔に比べて雰囲気が優しくなりました。 レイが嫌がるので、私生活の事には極力クビを突っ込まない様にはしているんですが、今回ばかりは理由を知りたくて仕方がありませんでした」



鑑賞されるのが嫌なんて玲らしい。


でもこういう仕事って、きっとプライベートでの縛りも厳しかったりするんだろうな。



「理由は宝生院さんだったんですね」

「私……ですか?」



私と目があった松本さんは、困った様に微笑んだ。





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