お嬢様になりました。
お腹に回された腕に力がこもり、よけいに玲の事を意識してしまう。



「俺も一人」

「そ、そうなんだ。 まだご飯食べ終わってないから、また後で連絡する!!」

「いや、連絡しなくていい」

「で、でも……」

「葵……」



言葉を遮られたと思ったら、そのまま隆輝は黙り込んでしまった。


どうしちゃったんだろう。


本当に今日の隆輝は変だ。



「隆輝……?」

「この間の事だけどな……悪かった……」



へ?


今隆輝が謝った?


それも本当に反省している様な沈んだ声で。



「この間って何?」

「バカか!! は、花火の時に決まってんだろ!!」



恥ずかしそうにどもりながら喋る隆輝が可愛くて、つい笑みが零れた。


いつもこうならいいのに。



「さっさと飯食え!!」



隆輝はそう言うと、ブチっと電話を切ってしまった。


勝手な奴。


でもまぁ、可愛かったから今回は許してやるかな。



「海堂、何だって?」



耳元で玲の声が響き、抱きしめられている事を思い出した。



「花火の時の事、謝ってくれただけだよ」

「それだけの為にわざわざ電話かけてきたの?」

「あ、うん、そうみたい。 変な奴だよね」



だけど嬉しかった。


花火の日、妙にギクシャクしちゃった事、隆輝も気にしてくれてたんだ。


私だけがそう感じてしまってたんだと思ってた。





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