お嬢様になりました。
「どうしたの? 何かあったの?」

「何かねぇと電話しちゃいけねぇのかよ」

「そういうわけじゃないけど……」



隆輝が用もないのに電話してくるなんて初めて。


いつも通り口は悪いけど、ちょっと静かで調子が狂う。



「やっぱり何かあったんじゃないの?」

「別に何もねぇよ」



だったらもう少し明るく話してよね。


全く、何考えてるんだか。



「ただ……お前の声が聞きたかった」

「な、何言ってんの?」

「照れてんのか?」

「照れてない!!」

「素直じゃない奴」



あんたに言われたくない!!


そう思いながらも、顔が熱くなっていく自分を抑えるので精一杯で、言い返す事ができなかった。


いったい急になんなの!?



「ッッ!?」



背中に重みを感じ顔を横に向けると、玲と視線が絡まった。


あまりの至近距離に、心臓が痛いくらいどくどくし始める。



「葵?」



隆輝の声にハッとなった。



「な、何!?」

「今一人なのか?」

「あ、う、うん。 隆輝は?ッッ」



耳に息がかかり、柔らかい感触がした。


見なくても分かった。


玲の唇が触れたんだ。





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