お嬢様になりました。
私は封筒を制服の胸ポケットに滑り込ませた。



「緊張しておるか?」

「まぁ、多少はね。 でも頑張る」

「その意気じゃ。 何か困った事があればいつでもいいなさい」

「うんっ、ありがとうっ」



お祖父ちゃんの笑顔に元気をもらい、ホカホカした気持ちで朝食を食べた。


家にいる時は一人でご飯を食べる事が当たり前になっていたから、お祖父ちゃんと食べる朝食は楽しくて話が弾んだ。


やっぱり家族っていいな。



「お話中申し訳ございません。 葵お嬢様、そろそろ学校へ参りませんとおくれてしまいます」

「えっ!? もうそんな時間!?」



荒木さんに言われ、私は急いでお茶を飲み干した。


楽しくて時間の事なんてすっかり忘れてたよ。



「葵、鳳理事長に宜しくと伝えてくれんかのう」

「分かったっ!! ちゃんと伝えるねっ。 それじゃあ、いってきますっ!!」

「いってらっしゃい」



椅子から立ち上がり、お祖父ちゃんの笑顔に見送られながら部屋を後にした。



「あの、ちょっとだけ自分の部屋に行ってもいいですか?」

「畏まりました。 それではお車を回しして玄関でお待ちしております」





< 48 / 360 >

この作品をシェア

pagetop