殺し屋天使

未だ黒煙を噴き出している店前の路上に倒れた小さな身体。


その脇にはチョコレートが散らばっている。




「おい。ダイジョーブか!わぃの声聞こえとるかっ。」




男の子の脇にしゃがみ少年は声を上げた。


かろうじて男の子の目は開いているものの、応えはない。


爆風に割れたウィンドウの欠片が身体に幾つか深く刺さっている。


だが致命的なのは爆風で叩きつけられた為の内臓損傷。


内出血を起こし、このままでは直ぐにチアノーゼが始まる。




病院に駆けこむのが適切なのは分かっているがココは魔窟。



ぼったくりといえども腕は確かな魔女などまだ良心的で、碌な知識もなく医療行為をする医者も五万といる。


そして院内の設備も不十分な上、不衛生だ。





何より―――手遅れ。




マトモに使える病院がここからどの程度の距離にあるのかは知らないが、多分、病院までもたない。

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