ビターチョコレートに口づけを

ピンポーン


兄に怒られて20分後。

大人しくTVを見ていた時にそれは鳴った。

急いでインターホンに行こうとするが、すかさず兄がそれをとった。

口パクで、無闇にあるくんじゃねぇ、といって。


「もしもし、壱。
ちょい待ってな。すぐ行くから。」


そう言って切ると、私の鞄を持って、手を差し出した。

それを有り難く借りて、なるべく響かないように立った。


「ほれ、後は自分で歩け。
明日から朝は一人なんだろ。
ったく、あのクソ親共も舐めてんよなぁ。
無駄に早い職場に就くとか」


チッと舌打ちと共に、差し出された手は離された。
それでも、バックは戻ってこない。
一応、これでも気を使ってくれているんだろう。


「まぁ、でも、しょうがないよ。
二人の職場、遠いんだし。」
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