ビターチョコレートに口づけを

「……だから、わしゃわしゃするのやめて。
今すぐに。」


そう言えば、あ、そっか、と言うように、すぐに手を離してくれた。

それを確認してから、自分の顔くらいまである肩をぺしっと叩いた。

いたっと言われた気がしたけど、気にしない。

ちらりと、視線を新婦にやって、やっと離れてくれたことを確認してから、いっくんににへら、と笑いかけた。


「いっくんのばか。ヘタレ。禿げろ。」

「え、何、急に。
ついに反抗期なの?」

「でも、優しくて、自分の事放り投げて、相手の幸せを願えるいっくんが、私は大好きだよ。」

「………ありがとう。」


だから、悲しんじゃだめだよ。
今日のこの日を。

泣きたいなら沢山泣いてもいいから。
誰かの隣で。
その誰かが、私だったらいいなっていうのは私のわがままだけど。

それでも、君を、独りになんてさせたくないんです。
優しい君だから。大好きな君だから。

今日のこの日を、雪との恋の終わりじゃなくて、新しいスタートラインにして欲しいのです。


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