あの夏の永遠~二度と会えない君へ~
追伸

ヒロちゃんへ


もしもこの小説が目に触れたなら、みつけてくれてありがとう。
私はあれから辛い思いを一杯したよ。

体もいっそう悪くなってね、ヒロちゃん最後にくれた葉書に、私のアイドルの愛称でありペンネームの江梨と呼ばずに、とってつけたように本名で書いていたでしょ。

あれ、悲しかったよ。

偽名なんて穏やかでない私に失礼な事をヒロちゃんの友達が言ってたけど、書道にも舞踊でも作家でもアーティストにも別に名前があるんだよ。

それと早く真面目に働くようにとも書いていたけど、私は無理をしすぎて病気になっただけで、ズルなんかせずずっと真剣に生きてきたよ。

その事については、今からでも心から謝って欲しい。

でも私はヒロちゃんを悪く言ったり憎んだりしてないよ。

もう一人のヒロちゃんの年上の友達の当時の彼女が誤解してたけど、悪口じゃなくてうちの旦那がさーみたいな程度の事しか言ってないよ。

ああいうのって親しさと愛情のあらわれでね、他の人がヒロちゃんの事悪口言ったら許せずに怒るそんなものだったんだよ。

ヒロちゃんが今でも誤解してると嫌だから言っておくね。

あれから一度だけ人を好きになったよ。

勇気だして結婚に踏み出そうとしたんだけど、元々、独身主義の人だから気持ちが変わっちゃってね、白紙になってそう、深い傷を受けて立ち直り、また誰かを信じるって大変な事で、それが駄目になるともともとガタは来てるし、張り詰めてるからダメージが強すぎてね。
前の傷をこじあけてしまうんだ。

それでね、私も努力してるんだけど、だってそうでしょう?
誰だって幸せになりたいもの。

でもね、あの夏が忘れられない。
ヒロちゃんが忘れられない。
ヒロちゃんとの日々が忘れられない。

ケイ、大きくなったよ。
背が高くてヒロちゃんそっくりだよ。
私から離れないの。

私に似て傷つきやすくて、ヒロちゃんに似て泣き虫だよ。
だけどね、私の事世界で誰より愛してくれて、友達思いの優しい子だよ。

いつか会ってやって欲しいな。

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