カレの事情とカノジョの理想
*




「――よかった。来てくれなかったらどーしよーかと思った」


迷ったのは少しだけで、結局私も蓮沼くんの後に続いて抜け出してしまった。


なんで私、素直に出て来ちゃったんだろう?

あの場に居づらいせいもあったけど、いつもならこんな風に誘いに乗ることなんてないのに。


ガードレールに腰掛けて私をジッと見る蓮沼くんに鼓動が跳ねて、慌てて話題を探した。



「えと……蓮沼、くん」

「ヤスでいーよ。美春チャンさー、人数合わせなのバレバレ」


ニッ、と白い歯を見せて笑う蓮沼くんは、愛嬌のある表情で、相手に警戒心を与えない。


この人に笑顔で誘われたら、大抵の女の子はイヤって言わないだろうと思わせる。不思議な魅力がある男の人だった。



「とりあえずさ、カラオケでも行く?」

「え、や……私は……」

「それともホテルとか?」

「なっ……!」


前言撤回! 

やっぱりこの人も、そういう目的なんだ……!


「帰ります! 私そんなつもりないから」

「ちょっ……待ってよ」


歩き出そうと足を踏みだした所で、強引に手首を掴まれた。


「離してよっ」

「ジョーダンだよ。んなムキにならなくてもさ」


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