花笑み ーはなえみー
同棲中の隆からそのメールが入ったのは、春休みに入ってすぐの事だった。
“ 昼飯忘れた。学校まで届けてくんね?”
見ると確かに、玄関には弁当箱が置き去りにされていた。
もう、早起きして作ったのに!
「まったく何様のつもり!?」
“大体、教師ってのはいっつも偉そうで…!”
なんてぶちぶち文句を言いながら校門をくぐると、まるで私を宥めるように、風が柔らかく身を包んだ。
… あ。
花の、匂い?
校門脇の桜は、間近に迫った春の気配に蕾を膨らませていた。
…なんだろう、 なんか
ドキドキ、する。
何かが起こる、予感がした。