花笑み ーはなえみー
人目につかないよう図書館の裏でお弁当を渡すと、小声で礼を言って隆は仕事に戻っていった。
…目も、合わせないの?
素っ気ないのは仕方ない。
一年で一番忙しい時期なんだ。けどー…
…この、空虚感は何だろう。
夏に私達は結婚する。
異存は、ない。
けど、……
ぴゅう、と冷たい風が吹き抜ける。
硬い灰色の建物は、心までも影で覆ってしまいそうだった。
あれ
ダメだ、なんか…
情緒不安定だな、私。
理解不能な涙を拭いた、その瞬間だった。