花笑み ーはなえみー


人目につかないよう図書館の裏でお弁当を渡すと、小声で礼を言って隆は仕事に戻っていった。


…目も、合わせないの?


素っ気ないのは仕方ない。
一年で一番忙しい時期なんだ。けどー…



…この、空虚感は何だろう。




夏に私達は結婚する。
異存は、ない。




けど、……




ぴゅう、と冷たい風が吹き抜ける。

硬い灰色の建物は、心までも影で覆ってしまいそうだった。




あれ

ダメだ、なんか…

情緒不安定だな、私。


理解不能な涙を拭いた、その瞬間だった。



< 3 / 7 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop