最後の贈り物【短編】
朱の暗号
子供たちの姿は校舎を飛び出して校庭を走っていた。

一番小さな背中を追いかけるように、二人の少年が少し速度を落としながらついていく。

「なー、おいリン!」

「もー、何度言えばわかるの!私は、す・ず!」

健一の言葉に、振り向くと頬を膨らませながら鈴が抗議する。

しかし、その足は止まらない。

健一は仕方ないなというように、軽く肩をすくめると、

「あー、はいはい。じゃあ、鈴。どこに向かってるんだ?」

先ほどから疑問に思っていたことを聞いた。

「それはね……」

鈴が再び健一に振り向いて口を開きかけた瞬間――。

「あっ、危ない!」

バタン!!

言葉と同時に手を伸ばした卓也だったが、間に合わず、鈴が勢いよく転がった。
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