【完】素直になれよ。





そのまま肩をぎゅっときつく抱き締めると


ピクンッと跳ねる久留米の肩。



…んな可愛い反応すんなよ……。



桜井がニヤニヤと
こちらを眺めていることにも気づかないほど


俺の頭の中は
久留米のことでいっぱいだった。



「私…夢見たの。」


籠った声で、少し鼻をすすりながら
久留米は話し出した。



「みんな私の存在を忘れて、どっか行っちゃうの。

…だけど、織川だけは
なんでかずっとそばにいてくれてたんだけどさ……」



そこまで言うと

また久留米は俺の背中に回す腕に力を込めた。



「……一言…言い残して…いなくなっちゃったんだ。」


「一言…?」



そう訪ねても久留米はこれ以上詳しく
夢の内容を話そうとはしなかった。



ただ

「夢で良かった…」



そう言うだけで、なにも。



< 206 / 399 >

この作品をシェア

pagetop