【完】素直になれよ。
あの子は…
あの女の子は…
「…なんでよ……。」
走りながら私は、甘くほんわりとした彼女の顔を思い浮かべる。
…李奈。
「久留米さんっ…!」
後ろで息を切らしながら私を呼ぶ声。
「来ないで…!」
大きな声を張り上げても
私の後ろの足音は消えることなく、徐々に近づいてきて、
しまいには腕を取られてしまった。
そのせいで私は動きをセーブされた。
「なに、してんのよ…離しなさいよ…」
息が上がって、途切れ途切れになる言葉を必死に繋げる。
私の腕をつかんでいるのは、東堂渉だった。
早くここから逃げ去りたい。
あの扉の音で、
きっと二人は誰かが見ていたんだって気付いたはず。
それなら早く…早く逃げないと…。
「逃がさないよ…。」
その言葉と同時に、
私の冷え切った身体は後ろからぎゅっと包み込まれた。