【完】麗しの姫君


…うそ。


「…パ、パ…」


「…雨降って来たし、今朝も体調悪そうだったから、仕事抜けて来たんだ。…大丈夫?」


「…パパ。ありがとう…」


「いいえ。びしょびしょだねぇ。…ほら、風邪引くから、早く中へ入って?」


「…はい」


少し力強い、パパの手に促されて車の中へ。


あ、先輩に挨拶してない…。


でも、今は話したくないな…。


その気持ちにパパが気付かないはずもなく。



「大丈夫、彼にはパパが挨拶しておくよ。なにも考えずに休みなさい」


「…うん」


…ありがとう、パパ。


パパって、すごいなぁ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「……姫の、お友達かな。…私は姫の父の、向井春人です」


「あ、はい。3年の、香坂陸です」


「そうですか。娘がお世話になったみたいで、ありがとう。…今日は、姫も疲れてるみたいだから、連れて帰ってもいいかな?」


「はい、大丈夫です」


「ありがとう。…これからも、娘をよろしくね。じゃあ」


「……はい」

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