【完】麗しの姫君


帰りの車の中。


「…………」


パパはなにも聞いて来ない。


「…パパ?」


「ん?どうしたの、姫ちゃん」


「車、濡れちゃってごめんね」


「はは、そんなことか。…全然平気だよ」


「…本当?」


「うん。それよりも、パパとしては姫ちゃんが風邪を引かないか、心配」


「…引かないよ、きっと」


「そう?そうならいいんだけど。…体調が悪くなったら、すぐに言うこと。これはパパからの約束事」


「…はーい」


「家に帰ったらお風呂に入って、温かいココア入れてあげるから、休みなさい」


「うん。ありがとう。…でも、パパお仕事は?」


「そんなの平気。渡がなんとかするよ。姫ちゃんは気にしなくていいの」


「本当?」


「本当。…ワタリドリも結構出来るやつなんだよ?」


「あはは、そっか、そうだね。じゃあ心配しない」


「うん」


パパ、パパ。


ありがとう。


パパのおかげで、張り詰めていた心が癒されたよ。


だから今は、なにも考えずにパパに甘えて、休みたい。

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