恋
その時だ。
沿道から、ショートカットの女の子が走り出てきた。
「危ない、夏木っ」
道路に座り込んだ状態の夏木くんは、走り終えた後で足もがくがくして動けないようだ。
彼女はそんな彼を庇うように頭を抱きかかえた。
そこに、勢いを止められない浩介くんの拳が振り落ちる。
頭の右側を殴られた彼女は、そのまま地面へと倒れこむ。
周りの人たちが大声を上げながら割って入り、浩介くんは両腕を二人がかりで抑えられ、呆然と地面に座り込んだ夏木くんは、彼女に向かって必死に呼びかけた。
「匡深(まさみ)っ、匡深っ」
その彼女の左側の頭からは血が流れていた。
どうやら道路に叩きつけられた時に出血したらしい。
私はそれをどうすることも出来ずにただ呆然と見つめ続けた。
「な、何でお前が出てくんだよ、匡深」
「浩介、落ち着け」
「俺は夏木を狙ったのに。なんでっ」
「とにかく救急車を呼んでください」