裏切り

 桜吹雪が視界をさえぎる。
 うららかな春、なのに心は沈む春。

 大学2年の新学期は、暗く重たい気分で始まった。まさに前が見えない状態、という感じ。

あれから、浩介くんとは会っていない。……夏木くんとも。
私たちはお互いに、連絡先さえ知らなかったから。

声が聞きたい、会いたい。

そう思って、休みの間に大学に来て彼を探したこともあったけれど、見つけることは出来なかった。

講義が始まれば、彼を見つけられる可能性は上がる……けど。それ浩介くんとも対面してしまうことを意味していて。
なんだか気分が重たくて苦しい。


「おはよう、芽衣子。休み終わっちゃったね」

「ああ、寧々おはよう」

「元気だしなよ。まずは夏木くんと話しないと、……でしょ?」


親友の寧々にはすべてを話した。
ドン引かれるかと思ったけど、寧々は最後まで話を聞いた後、

「こういうのって理屈じゃない」

って言ってくれた。


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