ドメスティック・エマージェンシー
気分転換で外へ出る。

辺りは主婦や老人しかいない。
まだ昼前なのだから当然だが、驚くほどに穏やかだった。

とんとんとん、と歩いていく。

太陽と雲が私に着いてくる。
散歩している野良猫が私を一瞥して、また優雅に歩き出す。

長閑な昼下がり。
なのに、胸騒ぎがする。

振り払うように走ると胸騒ぎは後を追ってきた。
弓で放たれたいくつもの矢のように、私を追い掛けてくる。

降参の意で草原に転がり込んだ。
芝生の下で老人たちがゴルフをしている。

目を開けると太陽がなかった。
雲に隠れてしまい、その明るい姿を消し去っていた。






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