ドメスティック・エマージェンシー
「大丈夫?」

遅いと思っていた糸部は転けた直後に来た。
やはり警察なのだ、と思う。
この細い体のどこかに筋肉を隠しているのだろう、何とも腹立たしい。

糸部が差し出した手を取らず、すぐさま逃げようとすると枷のように腕を掴まれた。

「待って!僕、もう警察辞めたんだ!」

しばらく言葉の意味が理解出来なかった。
そのまま硬直し、瞬きすら忘れて糸部を見つめる。

彼はゆっくり口を動かした。

「辞めたんだ」

スローに発された言葉は、私に衝撃を与えるのには十分だった。








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