ドメスティック・エマージェンシー
跳ねるように振り返る。
息を呑む。
心臓が止まり、血液が逆流した。

「君、遠藤さんとこの……」

ほっそりとした体型。
どこか頼りなさげなその男は、今私が一番に警戒しなければならない人物だった。

「いと、べ……さん……」

警察だ。
脳が血液に正常運転するよう命令し、全身は脳が命令を出す前に動き出していた。

「あっ!君!」

一目散に逃げる。
ひょろい男だ、逃げれるに違いない。

内心余裕ぶっていても足はもつれ、思うように動かない。

終いには公衆の面前で大袈裟に転けてしまった。









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