ドメスティック・エマージェンシー
「奢ってくれるんだろうね」

「えっ、なんでよ」

驚いて聞き返すとジッと見据えてきた。
私があの場で突き出されれば危なかったことを見透かしているようだ。

それと私の知らないゼロを……ゆうまの素姓を教える代償、とでも言うべきか。

ため息をつき、承諾するとなおは嬉しそうにメニューの中の料理を指した。

「昼飯食ってねえんだ、これね」

「はいはい。すいませーん」

店員を呼び出し、注文しながらそういえば私も食べていないことに気付いた。
しかしお腹が空いていない。
……昨日のことがあるからかもしれない、と注文を聞き終えた店員の後ろ姿を見送りながら、心に重りがのしかかるのを感じた。

なおは何やら傍らにある鞄の中を漁っている。






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