ドメスティック・エマージェンシー
しかし[イイコ]の私が駄々をこねた決心にもう一度渇を入れた。

せめて、問題のない[イイコ]に……

目を瞑り、深呼吸を繰り返す。
昨日と同じ、避けられるだけだ。
大丈夫。

空を見上げると太陽が雲に隠れる瞬間で、キラリと嫌みたらしく光っている。
それが見たこともない女王様を連想させ、扇で口を隠し私を嘲笑った様に見えた。


ドアを横に開く。
教室の空気が私に突き刺さる。
一歩、足を踏み込むとつい俯いてしまった。
みんなの視線が私に集中し、一つの大きな針のように感じた。

逃げ出したかった。
しかし足は後ろへ動かず、前へ前へ机に向かわせる。

ようやく着いた時、小さく吐息を漏らした。
重い鎧を着た戦士は一瞬だけ気を緩ませる。

机の中に手を入れると何かが当たった。
教科書ではない何かに驚き手を引っ込める。
しかしそれが丸めた紙だと理解し、安堵しながら自分の目の前に持ってきた。







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